
今年は新型コロナウイルスの影響で、マラソン大会が次々と中止になってしまいました。そして、その大会の参加賞などが届き始めましたが、大会によっては完走メダルも配るという選択をしました。これに関しては、ちょっと判断が難しいところです。
完走メダルは年号を入れているので、使い回すということができません。このため、中止になった場合には捨てるしかありません。「捨てるなら欲しい」という人もいるかもしれませんが、完走メダルは勲章です。フルマラソンを走りきったことを表彰する勲章ですから、どんな理由があっても配らないというのが筋です。
とはいえ、いろいろな考え方がありますので、今回は中止になったマラソン大会の完走メダルの価値についてお話するとしましょう。
完走メダルの価値を決めるのは自分自身

別記事でも書きましたが、完走メダルは勲章です。ただ、マラソンを走ったことのない人にしてみれば、そこに何の価値も感じません。デザインが良ければ「かっこいい」くらいに感じるかもしれませんが、その重さは理解できません。
実際に42.195kmを走ったことがないと、それを手にするためにどれだけ努力を積み重ねないといけないのかイメージできません。だから「すごいね」と褒めてくれても、完走メダルの価値はほぼゼロです。
同じ大会の完走メダルでも、フルマラソンを何十回も完走している人と初マラソンだった人ではやはりその価値が違います。初マラソンの人にしてみれば一生の宝ものになりますが、すでに完走メダルをいくつも手にしている人にしてみれば、たくさんある完走メダルが1つ増えたに過ぎません。
このように、完走メダルの価値は人によって違います。
ですので、中止になったマラソン大会の完走メダルの価値も人それぞれです。誰かの言葉じゃなくて、自分でその価値を決めましょう。スタートラインには立てなくても、そこまでの準備にを称えるという考え方もあります。「走ってないから無価値」とするのもいいでしょう。
中止になった大会の完走メダルには主催者の想いがこめられている

マラソン大会が中止になると、ネットでは「主催者が丸儲け」みたいな話になりますが、ほとんどのマラソン大会において主催者には利益なんてありません。それどころか1年もかけて準備してきたのに、開催できないという無念だけが残ります。
そして「絶対に来年は開催しよう。今年の分も含めて喜んでもらおう」そういう気持ちで、参加賞などを送付しています。もちろん完走メダルにもその思いがこめられています。せっかく作ったのに、その役割を果たせなかった完走メダル。「また戻ってきて欲しい」という願いをこめて郵送しています。
そう考えれば、決して無価値なものではないですよね。走れなかったからこそ飾っておき、「来年こそは」の気持ちを自分も維持し続ける。そして1年後にそれぞれの想いが詰まった大会が開催され、お互いが「よかった」と思えるわけです。
走れなかった大会の完走メダルには、42.195kmを走ったときとは違った重みがあるということを知っておくと、また違った想いが湧いてくるかもしれません。
マラソン大会を走ることだけがマラソンではない

「スタートラインには立てなくても、そこまでの準備にを称える」という考え方について、もう少し詳しくお話しておきます。マラソンを「42.195km走る競技」だと思っている人が多いようですが、実際には「42.195kmを走れるように準備するための競技」です。スタートラインに立ったときには、レースの99%は終わっています。
レース本番にいくらがんばっても、そこまでに努力をしていなければ、いい走りができることは絶対にありません。レースは自分の現在地を確認するための場であり、一夜漬けで準備して「あとはなんとかなるさ」と開き直る場ではなりません。
自分で目標設定をして、そこに向けてのトレーニングメニューを自分なりに組む。そのなかでゆっくりと成長し、その成長をレースで確認するのがマラソンです。マラソンの本質は準備期間にこそあります。これを忘れている、もしくは知らないという人がたくさんいますが、とても大事なことなので覚えておいてください。
だから、本当のところはレースを走れないことそのものは大きな問題ではありません。お金が返ってこないのはちょっと懐が痛くなる問題ですが、そこまでしっかり準備をしたなら、本当に欲しかったものはほぼ手中にあるはずです。
だったら、完走メダルを誇ってもいいはずです。
堂々と首にかけましょう。そして、次の目標に向けての準備を始めましょう。完走メダルを首にかけた瞬間がひとつのレースの終わりであり、次のステップへの第1歩です。
そういう儀式も意外と重要だったりします。中止になったマラソン大会の完走メダルが手元に届いたら、1度首にかけてください。そしてそこからは過去を振り返らずに前に進みましょう。来年リベンジするなら、飾っておくのもいいかもしれません。
