2021年4月21日
ランニングシューズに特別なインソールを使っている人もいるかもしれませんが、左右の足の長さが極端に違うなど、先天的に足に問題を抱えているのでなければ、基本的にインソールは必要ありません。もちろん使ってはいけないというわけではなく、筋力が付くまで、正しい姿勢が身につくまで使うというのはありですが、それに頼るのはNGです。
なぜインソールに頼ってはいけないのか、その理由とインソールとの理想の付き合い方についてわかりやすく解説していきます。いずれ特別なインソールを使わずに走れるようになるために、まずは基本的な考え方だけでも頭に入れておきましょう。きっとインソール選びの参考になるはずです。
特別なインソールはケガ防止のために使う
ランニングシューズにはそもそもインソールが入っています。シューズによっては縫い付けてあったり、接着剤などで固定されていますが、インソールのないランニングシューズはほとんどありません。ただ、標準装備されているインソールには、滑り止めや汗の吸収程度の効果しかありません。ところがインソールだけで市販されているものや特注インソールは、インソールそのものに機能を持たせています。
多くのインソールに搭載されている機能のひとつが「アーチサポート」です。ランナーは長時間のランニングをすると、足裏のアーチが落ちてきてランニングのパフォーマンスが低下します。なのでアーチをサポートして、後半の失速を防ごうというコンセプトで、アーチサポート機能が搭載されています。
足裏のアーチが落ちてくると、着地時の衝撃を吸収できなくなるので、ケガのリスクが高まると言われています。ただ、インソールで矯正した場合には、かなりよく出来たインソールでないと、アーチを上げるだけでむしろ衝撃吸収ができなくなるので、インソールがケガを招いてしまう可能性もあります。ただ、それなりのお値段がするインソールなら、まずその点は問題ないでしょう。
また、インソールには厚みを持たせることができるので、左右の足の長さが数ミリ違うという人は、インソールの厚みで調整することで、左右差をなくすこともできます。左右バランスが改善されますので、こちらもケガの防止に役立ちます。インソールによってはケガをしにくいフォームに促してくれるので、やはりケガ防止に役立ちます。
インソールはマイナスをゼロにしてくれるアイテム
最近はインソールもかなり進化していて、履くだけで走り方が最適化されるインソールみたいなものもあります。体に染み付いている悪い癖をインソールで改善して、無理のないフォームに導いてくれるわけです。これまで身体的に無理のある走りをしていた人も、インソールを使うことで走りが軽くなることもあります。
クッション性や反発性がアップするインソールを選べば、理屈の上では走りのロスが減ってランニングスピードも上がります。そう考えるとインソールには良いことしかないように思えますが、もちろんそんなわけはありません。インソールはあくまでも矯正器具であり、体にある程度の無理をさせます。インソールによっては、人間が本来持っている足の機能を低下させる可能性もあります。
本当は足のアーチや膝で衝撃吸収をしてなくてはいけないのに、インソールに頼ってしまうとその必要がなくなるので、走りそのものが雑になります。インソールに頼ってしまうと、いつまでもアーチが作られることはありませんし、インソールがなくなった途端にフォームが崩れてしまいます。それではインソールを正しく使えているとは言えません。
インソールはあくまでもサポートであり、身体的な問題を抱えているのでなければ、いずれ手放すべきアイテムです。インソールはマイナスをゼロにしてくれるアイテムであって、マイナスをプラスにしてくれるわけではありません。そしてマイナスをゼロにするのは、トレーニングによって誰でもできるわけです。だとしたら、いずれ特別なインソールを使わずに走れるのが理想ですよね。
インソールにお金を使わずに済みますし。
正しいフォームで走れる筋肉が付いたらインソールを外す
インソールを利用する理由が身体的な問題ではなく、フォームに問題がありそれを矯正するために着用しているなら、正しく筋肉が付いてきた段階でインソールは外しましょう。最初は不安になるかもしれませんが、短い距離から始めてゆっくりと走れば問題ないはずです。むしろインソールに頼り続けるほうが問題です。
そもそも私たちは何十年もかけて今の体を作ってきました。左右の足の長さが違っても、それで上手くバランスをとれるように生活し、ランニングもしてきたわけです。それを「左右のバランスが悪いから」とインソールを着用したら、むしろ筋力バランスが崩れてそこからケガになることもあります。そして上手くバランスをとれるようになったら、今度はインソールなしでは走れなくなります。
金メダリストの高橋尚子さんは、オリンピック用に左右の足の長さの差を補う専用シューズを作ってもらったそうですが、直前で今まで履いていた長さの差を補わないシューズに戻したという話があります。それくらい、普段の感覚というのは大切です。差を補わないとケガをするというレベルでなければ、多少の左右差はあって問題ありません。
走っている時間よりもその他の時間のほうが長いわけですから、安易に走るときだけインソールを使うのはおすすめしません。フォーム改善のために使う場合も、きれいなフォームで走れるようになったらインソールを外しましょう。そして自分の体の特性に最適化したフォームづくりへと移行していってください。
このとき、できるだけ足をサポートしないソールの薄いシューズを選びましょう。シューズによってはサポートが強く、結局インソールを履いているのと変わらないようなシューズがあり、それでは足が本来持つ力を引き出すことはできません。ワラーチのように薄くて、筋力を付けるのに最適な1足をしばらく履き続ければ、インソールに頼らない足が完成します。
まとめ
悪い癖が付いてしまった走り方を矯正したり、先天的に足にトラブルを抱えている人にとって、インソールはとても便利なアイテムです。でも、ほとんどの人が、本来はインソールなしでフルマラソンくらいは問題なく走りきれます。むしろ便利すぎるアイテムに頼ってしまうことで、足が徐々に弱ってしまう可能性もあります。
目的があってインソールを使うのは構いませんが、目的を達成したらできるだけ速やかにインソールなしの状態に戻しましょう。インソールに頼ってしまう走りをしていたら、これからずっと依存し続けることになります。まずはインソールを使って悪い癖を抜き、そのあとはソールの薄いシューズやワラーチを履いて足裏そのものを鍛えましょう。
楽をすると体はどんどんと弱っていきます。守るときにはインソールを使っても良いのですが、鍛えるときにはできるだけサポートしないというのがトレーニングの基本です。なんとなく特別なインソールを選んでいる人は、インソールなしで走れる自分を目指してください。