
最近になって睡眠の重要性を語るランニングトレーナーも増えてきましたが、多くのランナーはまだ「きちんと寝る」が定着していません。毎日忙しく働いていると、ランニングをしつ
つ十分な睡眠時間を確保するのが難しいという理屈はわかります。でもこれはとても重要なことです。
「休めないなら走らない」この考え方が抜けていると、いくら練習しても速く走れるようにはなりませんし、それ以上にケガのリスクも高まります。そこまで言ってもやはり睡眠時間を確保しない人もいるので、今回は睡眠することの重要性をお話します。
トップランナーは9〜10時間寝ている
あまり知られていないことですが、トップランナーの睡眠時間は1日9〜10時間くらいあります。これはランナーだけでなく、他の競技でも似たようなものです。かなり長いと思うかもしれませんが、彼らはこれくらい寝ないといけないくらいのトレーニングをしています。
いや反対かもしれません。これくらい寝るから厳しトレーニングに耐えることができ、選手レベルが向上します。
ただ9時間睡眠というと世界的には実はそれほど長時間睡眠ではありません。南アフリカの平均睡眠時間は9時間22分で、中国も9時間2分です。アメリカでも8時間36分です。平均ですので普通の人でも9時間くらい寝ています。
これが世界標準とは言いませんが、ランナーなのに睡眠時間が6時間以下という人は真剣に考えなくてはいけません。それは体を酷使しているだけで健康面でもメンタル面でも好ましいことではありません。
リカバリーは寝ている間にのみ行われる
走力を鍛えるときの基本的な考え方は「体に負荷を与える→回復」の繰り返しになります。回復をするときに、体に負荷を与える前よりも筋力などがアップするので、その状態でまたトレーニングを行うことでレベルアップしていきます。
これは超回復の基本的な考え方になりますが、ここで重要なのが回復です。回復をしないことには筋力が元よりも高くなることはありえません。また回復に時間がかかるのもよろしくありません。
いくらきついトレーニングをしても、きちんとした回復ができなければほんの少しもレベルアップしない。これがトレーニングにおける常識であり、回復させなければトレーニングはすべてムダになります。
その回復はどうすればできるのか。氷風呂に入る?アミノ酸を摂取する?クエン酸を摂取する?いずれも不正解です。回復させるには「寝る」しかありません。効果的な回復にアミノ酸などは役立ちますが、寝ていないことにはその効果が期待できません。
まずはこのことをしっかりと頭に叩き込んでおきましょう。
6時間プラストレーニング時間の睡眠時間は確保しよう
ではどれくらい寝ればいいのか。これは人によって違います。7時間で足りる人もいれば、9時間で足りない人もいます。ただ何も指標がないと決めようがないかと思いますので、まずは6時間プラストレーニング時間の睡眠時間を確保しましょう。
1時間のトレーニングをした夜は、6時間+1時間で7時間の睡眠です。フルマラソンを5時間で走ったら11時間になりますが、そのあたりは臨機応変にいきましょう。11時間睡眠は現実的でないので、8時間30分を2夜連続というのでも構いません。1週間で帳尻を合わせてください。
この時間を決めるやり方というのはオーバートレーニングを防ぐことができます。睡眠時間を6時間30分しか取れそうにない日には、30分しか走ってはいけないことになります。睡眠時間を十分に取れないけど走る時間が短ければケガのリスクは下がります。
もちろんトレーニング効果も下がりますが、すべてを得る方法なんていうものはありません。睡眠時間も確保せずにケガもしないで走力も上げたい。そんなワガママが通るわけがありませんので、走力アップしたいなら、たくさん走りたいなら寝ることです。
眠ることが怠惰ではないという考え方を持とう
日本人はとても勤勉で真面目です。
高度経済成長時代には「24時間戦えますか?」なんてキャッチコピーもありました。眠らずに努力を積み重ねる。それで日本は成長してきましたが、もうそういう時代ではありません。24時間戦う必要のない国にまで日本は成長しています。
せっかく成熟した社会を手に入れたのに、まだ忙しく働き続けるのはなぜでしょう?頭のどこかでのんびりすること、休むことが悪いことなんだと思いこんでいるのではないでしょうか。そんなことなくて、むしろ休むことが大切で「休むも練習」なんです。
少なくともマラソンはそういうスポーツです。真面目にコツコツ距離を踏んでいれば成長できるというものではありません。不真面目に思われても眠って休む。誰よりも速くなりたいなら、誰よりも多く眠る時間を増やしましょう。まずはそこからです。
まとめ
フルマラソンを走れる体を作るには、ただ走っているだけではダメです。トレーニングと睡眠は常にワンセットだと考えてください。睡眠で回復できないトレーニングはムダであり、最も避けるべき選択です。
朝ランをしている人もいるかと思いますが、間違っても睡眠時間を削ってまで走らないようにしましょう。
市民ランナーは9時間も10時間も寝なくても構いません。でも6時間にも満たないというのは少なすぎます。6時間に走った時間をプラスした時間だけ寝るようにして回復を促進させましょう。それも含めてランニングトレーニングです。
真面目なだけでは成長できない。それがマラソンです。上手に休みを入れて、丁寧に体を育てていきましょう。
